Complete text -- "(金)CDS補足"

03 December

(金)CDS補足


  • ここまでのエントリーにいただいたコメントも含めて、あらためてクレジットデリバティブに対する見方は厳しいなあ、と感じるこの頃です。最悪(ディザスター)シナリオとして何が考えられるでしょうか。

  • クレジットデリバティブの中でもっとも取引高が大きいと考えられるCDSは、前三回のエントリーで述べたように、リスク移転取引ですが、移転するリスクは必ずしも実体を伴う債券、融資などとは限りません。取引二当事者さえ合意すれば、リスクを「作り出す」ことができます。このように作り出したリスクについては、片方がもうかれば片方が損をするという損益ゼロサムになります。

  • 極端な市場を想定してみます。多くの金融機関などの市場参加者が、会社Xのリスクを売却(CDSのプロテクション買い)を、特定のカウンターパーティーAに対して行います。Aは、Xのリスクを次から次へと引受け、その残高は膨大なものに上ります。そこでXが破綻した場合に、Aに支払い余力があるか、あるいはAがすべての取引相手に対して十分な担保を差し入れていれば問題は生じません。ここで、Aまで破綻してしまい、担保の売却もうまくいかなければ、CDSの取引相手がA破綻にかかる支払いを受けられなくなります。取引相手が反対取引を別な取引相手としている場合、そちらへの支払いが行えずに連鎖倒産ということになり、この連鎖倒産の輪が広がれば金融システムリスクということにもなりかねません。

  • このように、リスクがカウンターパーティーのデフォルト連鎖という形で電波するのが私の想像し得る最悪のシナリオですが、今のところこのような事態は避けられているようです。ストップのメカニズムは、各カウンターパーティーのリスク管理(担保をとるとか<オフバランス取引の担保だけではなく、事実上の担保となる証券化商品・仕組債の発行も含まれます>、特定取引相手へのリスク残高に上限を設けるとか)に尽きるということなので、これがうまく機能しなければリスクは波及します。システムリスクというほどにはなっていませんが、リスクの大きな引受手であったモノラインの不調が、リスクの伝播につながったのは、リスク管理のほころび(リスク額が大きかった、一部に担保をとらない慣習があった)と言えるでしょう。

  • クレデリの世界でリスクが大きく広がっていない背景として、債券発行によるリスク移転が最終形となっているチェーンが多いこともあるように思えるのですが、これはもう少し考えをまとめてからアップしたいと思います。現時点では、リスクを集中して引き受けた先―モノライン、AIGなど―はビジネスモデルとして成り立たなくなっており、また、市場混乱の過程でリスク仲介大手のリーマンブラザーズの破綻もあり、カウンターパーティーの一部が欠損する中で、システミックな連鎖は生じていないという評価になるでしょうか。


06:19:00 | mentor | | TrackBacks
Comments

蒼 wrote:

なるほど、大変よく理解できました。数年来の疑問が解決できました。ちなみに自分はCDSが諸悪の根源であるとは考えていません。
その社会的価値評価を行うために、どういう仕組みであったのかを客観視できるようになることは必要だと思います。暴落につき物のスケープゴートは歴史の副産物というものでしょうし。

全体像を把握した中で浅知恵ながら自分は結論として以下の通りに納得しました。「CDSはその保証システムの欠陥により予めバブル発生から崩壊までを許容していた金融システムである」と。

自分にはこの保証システムの欠陥という点は疑問の余地をはさまざるを得ないと思います。
安定的なリスク分散システムを構築するために今後もCCPのような仕組みを構築していくのは歴史の必然であるといえますでしょうし。
12/04/08 07:22:14
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