Archive for November 2008

28 November

(金)CDSその2


  • CDSは、昨日書きましたように「信用リスクの移転」をする取引なのですが、おおざっぱな仕組みは、C(会社や国など)に信用事由(倒産、不払いなど)が発生した場合に、A(リスクの取り手)からB(リスクの売り手)に対してなんらかの支払いを行うというものです。Aが、Cの信用力を補完するような支払いをBに対して行うということですから、Aは保証人のような役割を果たすことになります。

  • この取引には、保証の有効な期間(5年など)があるため、取引元本が10億円だとすれば5年間CDS取引は10億円存在します。ここが社債や株の売買とは違うところです。BがAにCの信用リスクを移転するという意味では、Cの発行する社債やCに対する貸付などをBがAに売却するというのでも同様の効果になるわけですが、こういった売買は代金支払いと権利の移転が終了したところで取引は終了し、取引残高はゼロになります。つまり、似たような経済効果を生む取引でも、CDSでは5年間取引が継続し、社債の売買では売買執行時に取引は終了します。これがCDSをはじめとするデリバティブの残高を膨らませている背景です。

  • 10億円の社債がA→B→D→E→。。。と転売されていっても、社債の残高は10億円にすぎませんが、これをCDSでリスク移転していくと取引の数だけ残高が積みあがっていくわけです。だからといってその分Cの信用リスクが増幅しているわけではありません。最初の売り手であるAは保証効果を得ており(リスクの「ショート」)、最後の取り手はリスクを10億円分保有しますが、中間にいるB、D、E。。。は売り買い両建ての取引をしているため、Cのリスクをもっているわけではありません。取引残高が増えたからと言って、リスク量が倍々ゲームで増えているわけではないということです。わかりきったことをだらだら書いていますが、実はこんな単純なことに誤解の元があったりするので。。。

  • で、そんなデリバティブ固有のリスクは何かというと、Cのリスクが倍増してしまうわけではないのですが、「取引相手のリスク」が新たに生まれるということだと思います。Bにとっては、Aからリスクを買ってDに転売しているわけですから、自身はCの信用リスクを負っているわけでもショートしているわけでもありません。でも、取引期間中にDが破綻してしまうようなことがあれば、リスクの転売先を失うわけですから急にリスクを抱え込むことになります。再転売先が見つかったとしても、旧契約より悪い価格でしか売れないかもしれませんし、最悪の場合には再転売ができないかもしれません。反対側のAが破綻する場合には、リスクの仕入れ先がなくなるわけですから代わりに売ってくれる人を探すことになり、ここでも損失の可能性があります。

  • この取引相手破たんのリスクは「カウンターパーティーリスク」と呼ばれ、デリバティブ市場に限らず金融取引全般でリスク管理の対象となるわけですが、デリバティブは特に、先に述べたような仕組みで残高が積みあがっていきますので、その分カウンターパーティーリスクも膨大に蓄積される可能性があります。

  • こういったリスクへの対応は、いろいろな形でなされています。9月のリーマンブラザーズの破綻に際してもこのリスクに大きな注目が集まりましたが、対応策が功を奏し大きな問題は今のところ起きていないようです。もちろん、対応の過程でいろいろと改善すべきことは見つかっているようですので、修正は必要でしょうが、今のところ市場全体を揺るがすような事件にはならなかったといってもよさそうです。

  • では、なぜCDSがいまだに一部のメディアなどで悪者扱いをされ続けるのか。新商品にはありがちなことだとあきらめるわけには実はいかないのでこんなことをくどくど考えているのですが、スケープゴートを名指しにすることで本質的な批判を見失うという大問題につながるのではないかと思うのです。これは別にCDSだけではないのですが、あまりにも瑣末な批判に拘泥したり、極端な個別商品・個人攻撃に走ったりという展開になるとその後はロクなことにならないような気がします。少なくとも英米が、大きな枠組みをみんなで考えるという挙国一致体制になりつつある中で、(間違った)犯人探しを続けている現状で本当によいのでしょうか。


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27 November

(金)CDS―クレジットデフォルトスワップ


  • クレジット・デリバティブ(信用リスク派生商品)、略してクレデリ(笑。金融用語に限らず日本語ではすぐに縮めますよね)について考えることの多いこの頃。今日もそういう機会がありました。クレデリなんていうものがあるせいで金融市場の混乱はまだおさまらないという点を解説してください、という問いかけです。

  • 最初からこういう問題設定だということは、相手は「ああ、そういう(怪しい)仕組みを(よく物事がわかっていない)投資家に(だまして)売るのでリスクが倍々ゲームになるんですね」という納得を求めているということなので、話を組み立てるのがとても難しいです。

  • デリバティブ取引はゼロサム、つまり片方が得すればもう片方は損するという仕組みなのでその取引の残高が60兆ドルあるからといってそれがすべて損失に化けるわけではありません。市場全体を見れば損益通算ゼロです。株の売買などとは違って、代金と現物を交換すれば終わりというわけではなく、5年なら5年という期間契約が続くため、金額がつみあがっていくので残高は増加します。その多くは売買両建て。

  • デリバティブであろうがなんであろうが、リスクを取った人はその管理をせねばならないということで、ここは株を買うのと同じです。デリバだけが悪者扱いされるのは、何といってもカタカナ商品ですし(笑。でもそういう側面はあります)、オフバランス取引なので帳簿に資産計上されない。また、相対で契約条件を合意しさえすれば、損失飛ばしに使おうと思えば使えないこともないかもしれない(←今は時価評価が徹底しており、デリバ市場は現物市場より時価が見つけやすいのでこれは相当難しいと思いますが。。。)ということなんでしょうかね(CDSを損失飛ばしと解説するメディアまで登場して相当びっくりしました)。

  • クレデリの代表商品であるCDS(クレジットデフォルトスワップ)は、保証や保険にきわめて近い性質をもつものだ、という説明もわかりやすいようです。保証をどのようにリスク管理すればよいかという伝統的な質問に置き換えられれば、ここまでの説明は成功です。

  • 保証も同じですが、デリバティブのような一定期間契約関係が継続する取引には固有のリスクがあります。。。と、続きは次のアップで。


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26 November

(金)資産買い取りプログラム


  • FRBが新たな資産買い取り枠組みを公表。金額も8000億ドルと思い切った規模です。株の反応はいまひとつ(ここ先週金曜日から相当あげていましたものね)ですが、クレジット市場には素直に好材料と考えられそうです。買取対象になるものは少なくともだいぶ価格が安定してきそうですね。シティの救済措置(くわしくはこちらを)とあわせ、年末の緊張を緩和してくれますように。。。

  • 国内外、年末・年度末にかけてまだまだいろいろニュースがありそうです。日本は特に個別企業ベースのヘッドラインに注目する日々が続きそうです。。。前回の低迷脱出の時もそうでしたが、悪くなる時は何もかも一気に悪くなるんですが、よくなる時には一発解決というのはなくて少しずつ事実を積み重ねてよくなっていくということだと思うので、地味なものであってもそういうニュースを拾っていきたいものです。。。

  • などとぼんやり考えながらテレビを見ていたら、「海外旅行に行く代りに豪華おせち(名古屋の話)」「韓国ウォン安を活かして安く部品を韓国から輸入」というニュースが紹介されていました。ふむふむ。ビジネスチャンスはあるものですね。例年と同じことをやっても難しい環境で、新しい工夫をうまくできるかどうかが勝負となりそうです。


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25 November

(金)シティ救済


  • 日本は連休でしたがその間にアメリカはいろいろニュースがありましたね。ガイトナー次期財務長官指名、シティへの追加資本支援・不良資産処理支援。何せ損失額を確定しないと資本をいくら入れても話にならないので、処理支援をするよと宣言することは意外と効くかもしれません。とはいえ、ファンダメンタルズは変わっておらず、実体経済の方は今のところ「経済対策」頼み。自動車会社も残っています。ここまで、「これは大丈夫だろう」と漠然と下値線に置いていたものは全部だめになっているので、自動車もだめかもしれないなあ。。。と私が考えるぐらいですから、そう考える人は世の中多いでしょうね。

  • 週末のニュースで気になったのは米国2年債の入札不調。大きな政府への切り替えで資金調達はいっそう増額になる中で、しばらく需給が相当重くなります。

  • 国内は、この2週間ぐらい大手不動産も厳しいですね。マンション販売戸数の見込み下振れ、大都市圏の商業施設空室率上昇などが効いているようですが、CPや社債市場の変調も影響もあるとすれば、少し長引くかもしれません。大学やレストランチェーンの運用失敗ニュースも表ざたになり、今後こういうニュースも増えてきそうです。


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20 November

(金)事業再生ADR

  • 毎日株の上げ下げを嘆いていてもなかなか話が展開しない
    (それにしても昨日のNYはまた思い切って下げてくれましたね)ので、本日はまったく別な話題。

  • 事業再生研究機構という倒産・再生の実務家や学校の先生などの機構があるのですが、ここで「事業再生ADR」というテーマを取り上げた勉強会がありました(会員限定)。ADRというのはそもそも裁判外で紛争を解決するためのシステムで、事業再生ADRというのはこれを事業再生に利用する目的でいろいろな要件を定めているもので、これを利用する場合にはつなぎ融資の弁済優先性の検討など、実務的な配慮もあるというものです。

  • 日本では、裁判外の事業再生への取り組みとして「私的整理ガイドライン」というものがあり、これは銀行(メインバンク)が深く関与して私的整理をまとめあげるガイダンスであり、かつ要件に準じて処理することについては、債権者に対してもそれなりのインセンティブがあることになっています。ADRは、(私のつたない理解では)私的整理GLの精神や多くの要件を引き継ぎつつ、メインバンクの代わりに第三者ADRを手続きに関与させることで、メインバンクを表に出さずメイン寄せを避けるという効果が期待されているようです。

  • 景気が低迷すると、当然事業再生という言葉を聞くことが多くなります。日本は、前回の景気の底から脱出するときに、いろいろな工夫をし、そのいくつかは今でも制度として残っています(時限性のある産業再生機構などはもうありませんが、そこで活躍した実務家がたくさんいることは無形の財産だと思えます)。一方で、メインバンクの役割が、債務者によってはだいぶ低下しているようです。また、前回は金を突っ込んでくれた外資系プライベート・エクイティがどの程度活躍してくれるのかは不明です。

  • 事業再生ADRについては、業再生実務家協会というところのシンポジウムもあるようです。また、これ以外にも、会社更生手続きの新たな運用など、実務ではいろいろなことが起きているようで、しばらくは丁寧にフォローしていく必要がありそうです。。

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