Archive for June 2007

28 June

(金)再び、ベアスターンズ


  • 昨日に続き、ベアスターンズ傘下のファンド関連。ちょっと事実関係を整理してみましょう。

  • ベアスターンズ(日本ではゴールドマンサックスほど有名ではないかもしれませんが、全米第5位のインベストメントバンクです)の運用部門、BSAM(ベアスターンズアセットマネジメント)が運用するファンドのうち、米国サブプライム住宅ローン(非優良債務者向け)関連商品に投資していたふたつのファンドが、含み損をかかえ、(1)投資家の解約請求に当面応じないというレターを出した(2)取引相手金融機関からの追加担保請求に応じることが出来なかった、のが6月初。

  • (2)の結果、取引相手の一人であるメリルリンチが、すでにとっていた担保を売り払うと宣言。この担保が、サブプライム住宅ローン担保証券(証券化商品)であり、市場流動性が低いものであったことから、市場が崩れるのではないかと大騒ぎになり、また、ファンドの損失はあらためて「サブプライム住宅ローンの問題は片付いていない」ことを市場に再認識させる背景となった、ということですね。結局、メリルは売るかもと噂されていた8-8.5億ドル(100億円弱分ですね)のうち、1億ドル分しか売らなかったといわれており、証券化商品のインデックス価格こそ下落していますが、市場が崩れるというほどには今のところなっていません。

  • サブプライム住宅ローンは評価が難しくて、借り手(個人)を直撃することから消費が落ちるのではないかとか、担保となっている住宅が投げ売られて住宅市況が一層冷え込み、これが信用力の高い債務者(個人)にも影響を与えるのではないかとか、というようないわゆる実体経済への波及もあり得るわけです(個人的にはこのルートはあまり実現可能性が高くないと思っていますが―サブプライム層の消費はもともとたいしたことないし、住宅市況はアメリカ=移民も含めデモグラフィの若い国なので需要の底入れはあると思いますし)。

  • 問題は、「金融市場経由の波及」があるかどうか、ということです。株式市場の好調も、企業倒産の少なさも、世界中の投資家が有利な投資先を求める結果、有り余る資金が投下されて価格が下支えされるいわゆる「流動性相場」の様相を呈しているといわれます。今回BSAMのファンドが投資対象としていたサブプライム住宅ローンの証券化商品は、そんな投資資金を投資先につなぐとてもよくできた商品ですが、この市場の価格や需給が崩れると、資金フローが滞り、これまで「お金を借りることが出来る人が借りられなくなる」かもしれないというリスクが生じます。この債務者の中には、住宅ローンの個人だけではなく、企業も含まれるわけです。

  • すると、ここまで資金を調達することが出来たので倒産せずにすんできた企業や、借入れが容易なので成立してきた大型M&Aなんかは調子が悪くなる可能性もある。そこへもってきて金利が上がるとすでに借り入れている分のコストも上昇する。という具合に、悪いことが重なると景気全体への影響もナシとは言えないかなあというところでしょうか。

  • そのほかには、こういった証券化やM&Aから大きな利益を上げてきたファンド(ブラックストーンがIPOしましたね)とか、投資銀行などの金融機関は、収益減に悩む可能性もありますし、投資家の一部に大きな損失が出ると、追随売りが他の市場で発生する可能性も無いとはいえません。あくまでも「悪いことが重なれば」というリスクですので、必ず起こるというわけではもちろんありません。

  • しばらく金融市場は神経質な展開が続きそうですね。こうなるとすぐに「明日は世界の終わり」というような予想が頻発するのですが、実はそれも故ナシではなく、金融業界に長ければ長いほど「こんなに長い間クレジットスプレッドがタイトなままなのはおかしい」「長期金利もそうはいっても低い状態が長すぎる」というサイクル感が強いため、クラッシュリスクを現実のものとして想定するのだろうと思います。また、今回はそもそも舞台が証券化だったり証券化リンクのデリバティブだったりと、金融取引が上場物ではないので実態がわかりにくく、後処理もインベストメントバンク同士の相対で行われているために情報が外に出にくいので、「何が起きているのかわからない」分リスクを大きく感じるという側面も否めません。

  • 別件。今日はひさびさに超美味しいレストランを新規開拓。写真をアップする時間が出来たら投稿します。



23:37:00 | mentor | 1 comment | TrackBacks

27 June

(金)ベアスターンズファンドとサブプライム



  • ほぼ1ヶ月お休みしてしまいました。スミマセン。過去の写真もぼちぼちアップしていくことにします。ちょっとプライベートに書き物をしていて、ようやく目処がついたところ。とはいえ、すぐに次のウェイブがやってくるのですが。

  • マーケット。この数年、全体としてボラティリティが低い中で、ちょっとしたことにもびっくりする相場が続いていますが、ベアスターンズファンドの失調⇒サブプライム問題再燃、は「ちょっとしたこと」の扱いで本当によいのかどうか、まだ迷うところです。

  • 前回サブプライムが問題になったとき数字を整理してみて、金融システムにはあまりリスクがないし、証券化でリスクはばらまかれているので誰かが集中的に損失を蒙ることもないだろう、実体経済への影響も、Alt-Aより上にすぐ波及しなければ、アメリカのデモグラフィを考えれば大丈夫と考えていたのですが、その折にひとつだけネガティブ・パスがひっかかっていて、ベアスターンズ・ファンド問題はそこが来ちゃうかな、という感じ。

  • M&Aブームとか欧米企業のデフォルト率が空前の低さであることの背景は、どう考えてもファンダメンタルズが良いというだけではなく証券化で金が安定的に入ってきているからという側面は否めないと思うのですが、このルートが切れたらその二つが巻き戻されるのではないかという恐怖。金利が上がって企業の財務が傷むより、流動性が引くことの方がスピードが速いんじゃないか、と思います。

  • ということで、日本ではあまり注目されていないようですが、ベアスターンズ傘下のファンドをめぐる動きには今後とも注目です。グローバル・クラッシュにはならないと思うのですが、最悪のケースでついに米欧がデカップリングし、日本を含むその他の国は米国依存度で運命が決まる、というシナリオは考えておいたほうが良いかな、と。




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01 June

(金)グローバル金融市場雑感<大上段に振りかぶってみました>


  • 旅が続いておりまして、過去の「ごはん」のアップが間に合いません!このブログは原則として食べた日の日付にアップしている(日記)なので、過去分も地味に更新しています。どれが新着かわかりにくくてスミマセンが、過去ログのチェックも、ぜひ。今日はロンドンの残りをアップします。

  • さて、今はNYにおります。休暇なんですが業界関係の方といろいろお目にかかってお勉強。しかし、日に日に非伝統金融機関・部門(ファンドは言うまでも無く、銀行でも市場で打ち合っているんじゃないような人とか)へのインタビューが増えてきますね。自分の関心が金融市場の枠組みから外に広がっているのかとも思いますが、金融がいろいろなところにアメーバのように入り込んでいる、ともいえるかもしれません。

  • 一人の人間がお目にかかれる方の数は当然限られているので、たった二回の旅で全体感を語るのは無理と承知の上ですが、二週間前の欧州の印象は「汎欧州・中東資金の集積と投資先地域のひろがり」「時価評価の流れに棹差すプライベート投資の拡大」「非米国ビジネスの広がり」でした。

  • NYでは、「投資の機関化―投資家も、ファンドも」「各国外貨準備基金運用への注目」「中国クラッシュの懸念」が共通の話題だったように思います。だいぶ印象が違いますね。欧州はよりバラエティのある方向に進んでいて、米国は資金も市場も集約的になっているという感じ。この感想がただしいかどうかは、これから勉強してみます。

  • いや、しかしひとつのヘッジファンド事務所で、ノーベル賞経済学者2人がそろい踏みしているのを見たときにはさすがに感動しました。旅をしてみるといろいろとあるものです。休暇をとってご迷惑をかけて会社の皆様、本当にごめんなさい。



19:55:10 | mentor | 1 comment | TrackBacks