Archive for September 2005

30 September

会社は誰のものか(3)


  • エコノミストの記事では、会社はモノでも人(擬制された法人)でもなく、人が働く「場」に過ぎないという論も紹介されています。

  • 自分が、株主至上主義に転換した時期の米国金融機関に働いていたせいか、株主が会社のオーナーであるという考え方にはなじみがある一方で、ROEの最大化が近視眼的な経営を生むトラップを持つことは間違いないとも思います。ただ、会社を無理に存続させる理由に、社会的な意義というような道徳を持ち出すことは、特に今の世の中では難しいものがあるので、これを方向修正するのにROEを持ち出すことは悪くはありません。

  • 長期的な安定か、短期的な収益最大化か。どちらかの白黒という世界はありえないので、どちらかに片寄せた議論は間違い。株主のものだといえば、即座に人のくびきりが始まるかというと、それはきっとない。アメリカの会社で、首切りが横行しているような印象を持つのかもしれませんが、一方で優秀な人を引き止めるための努力にはものすごいものがることはあまり語られないことが、どうもよくないような気がします。雇用の「数」の維持ではなく「質」の維持。半期ごとではなく中長期の株主利益。そういう方向性は見えてこないものでしょうか。



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29 September

会社は誰のものか(2)


  • もうまもなく、日本は人口増加から減少フェーズに移ります。いろいろな意味で、優れた労働力は激減していくことでしょう。アメリカで常に偉大な起業家・企業家が生まれ続けることの理由のひとつは、差別社会(表面上はなんといおうと)であることから必ず出世してやろうというインセンティブが生まれ、下からの突き上げを受けて上も緊張感があること…と説明されたことがあります。

  • ま、そういう意味では日本はきついですよね。しばらくの間、女性はなぜ優秀なのかなあ…(思い切りという意味では刺客もある意味そうかもしれませんが)と揶揄的なコメントを聞くことも多いのですが、昨今は女性の「不利さ」も相対的に薄れているので、ばねになるような差別の元も減りつつあるかも。

  • などという与太話はともかくとして、確かにもっと日本の会社は働いている人を大事にしたほうがよいのではないか…と最近とみに思います。事業再生のお話をうかがうと、とにかくキーはその会社で人をさがすこと、そして必要に応じて優秀なCEO・CFO役を導入すること、となることが多い。そして、当たり前ですが再生でなくとも人を重用することが必要。そして、岩井先生ご指摘のように、世界全体が右肩上がりの成長をしない今、差別化を常にしていくために集団の力=会社組織が必要であるとすると、そのなかで個性ある粒=人を、金太郎飴ではなく育てていくノウハウを改めて日本の会社は身につけないといけないのではないか、と思った次第です。



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28 September

会社は誰のものか(1)


  • 無断でお休み、すみませんでした。遅めの夏休みで息抜き。選挙の狂乱が過ぎた後の地方についていろいろ考えることもありましたが、今日はここのところずっと頭から離れない会社は誰のものか、です。

  • 「論争 会社は誰のものか」エコノミスト9.27号 はかなり硬派に、あらためてこのテーゼに関するいろいろな考え方を簡潔に(簡潔すぎるところもありますが)まとめています。その冒頭には、岩井先生のポスト産業資本主議論。最近、岩井先生の説をほめる方に出会うことが多かったため、本も読んでみました。

  • 誤解を恐れずに簡潔すぎるまとめを試みますと、会社を二階層構造と擬制し、株主の保有する部分と、人間という誰かが所有することのできない部分で考える。そして、かつては株主が資本を拠出し、ハードウェアをそろえればもうかるビジネスモデルであったのが、安価な労働力が減り、差別化によってしか会社が金儲けをすることができなくなる時代であり、会社は社会のものである…と。

  • エコノミストでは、学術的な立場から岩井先生の説は回答を出していないとの批判も紹介されていますが、法学論争・経済学論争はともかくとして、確かに岩井先生の説には現場から見て説得力はある一方、そういうことは学問で説明するものなのだろうか…と思うところもあります。M&A大ブームで皆さんはどう考えるでしょうか。



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26 September

クレデリ(最後に)


  • 先週の記事にいくつかコメントをいただきました。訂正も含め、以下。

  • まず、コンファメーションの放置問題ですが必ずしも新しい参加者によるものではなく、既存のディーラー間で起こっていたという印象だそうです。お詫び・訂正いたします。

  • そのコンファメーションについては、電子化プラットフォームが欧米で普及しつつあり、業界団体であるISDAもこれを支持する取り組みが進められています。ゆくゆくはコンファメーションだけではなく決済もこのベースにのるのかもしれません。

  • 電話取引の契約成立時点は、電話(口頭)です。ただし、今回の問題に関連してISDAが提唱しているプロトコルでは、Novation―すなわち、既存取引(二当事者)を第三者に移転(新たな契約当事者)する場合、三者の取引として、WRITTEN(書いたもの)証拠がなければ契約そのものの有効性を否定する、すなわち文面の取り交わしを以って契約成立の要件とする構成のようです。

  • Novationの市場慣行(ORAL主体だと聞いています)を帰ることができるか。今後の展開に注目しています。

  • とはいえ、日本にはあまり関係ないんですよね、この問題。そもそもヘッジファンドと直接取引のあるPB(プライムブローカー)でなければ、勝手にの取引を譲渡されちゃうという目にもあわないわけですし。また、優秀なバックオフィスを擁する日本で、電子化ニーズがどれだけ実地にあるか。まあ海外市場で広く普及してしまえば、システム導入が市場参加の要件となる可能性もありますが。


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22 September

クレデリ(解説3)


  • 近年の市場急拡大を支えたのはヘッジファンドの参入です。ヘッジファンドは、一言でくくられることが多いのですが、いろいろなタイプがあり、かつこれを「市場の悪者」扱いすることは不正解です。クレジットに限らずすべての金融市場で主要な参加者となりつつあるヘッジファンドは、市場の流動性を高め、多くの場合騒動の開始時には、リスクのアンワインドか動きに乗っかる取引によって値動きを増幅するのですが、その後のカウンターもファンドであったりします。つまり、最終投資家やマーケットメイカーとは違ったタイムホライゾンを持つ市場参加者で、市場の厚みを増すために、一方向に行きっぱなしにならない可能性が出てくるということです。

  • 特に、昨年秋ごろからヘッジファンドやその他の市場参加者が取引ポジションを積み重ねてきたCDSインデックスの取引は、比較的歴史の新しい取引です。これは、個別やポートフォリオの信用リスクをヘッジしたり投資したりするいわば実需の取引とは切り離され、CDSによってリスクが創造されたものと言い切ってもよいでしょう。つまり、近年クレデリ市場が急拡大した原因は、市場における信用リスクの高まり(GMやフォードのリスクなど)ではなく、新商品・新参加者による新たな形態の取引によるものです。

  • そして、このような急激な市場の拡大が、先週取り上げた取引契約書の問題につながっていきます。デリバティブに慣れていない取引当事者がそもそも契約書にサインをせずに放置する事態が発生し、また、さらにポジション解消を積極的に行なうヘッジファンドが、第三者に取引を譲渡(ノベーション)する件数が増え、これがさらに契約関係を複雑にしたのです。

  • 取引自体は、最初の取引にせよその後の譲渡にせよ、原則として電話などで契約成立!といった段階で成立するため、その後の取引契約書はこれを確認する効果をもつにとどまるのですが(そうはいってもちゃんと取り交わしておいたほうがよいですが)、譲渡の場合には、もともとの取引当事者二者と、新たに譲り受ける者の三者間で合意しなくてはならないのですが、契約関係から離脱するファンドが、もとの取引当事者の同意を得ないこともあり、こうなると譲渡の成立事態が怪しくなります。さらにこれを確認するノベーションの確認書がサインされずに積み残されてしまえば、契約関係が不安定になります。

  • この問題を解決するための話し合いが、先週のNY会合であったわけですが、ひとつはノベーションのやり方を簡素化することで、これはISDAという業界団体が会合前に提案をしています。こういった問題を事故が起こる前に認識し、積極的に解決していこうという姿勢は、強靭な市場の発展を感じさせるものです。ヘッジファンドという従来のISDAではなかなか完全には取り込みにくいパーティーを引き込むためには、連銀NYがこの会合を呼びかけたことに大きな意義があったのかもしれません(今後の実務の展開を見守りたいと思います)。

  • 問題を認識しつつ、市場の健全な発展に向けて市場参加者だけではなく、公的当局がこれに取り組む。そういう前向きなことではないのでしょうか。



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